医療法人社団 慶心会

置塩泌尿器科クリニック

前立腺癌

前立腺癌は典型的な高齢者発生癌であり、その発生、死亡ともに欧米先進諸国に高い傾向にあります。
例を挙げると、米国男性1996年の統計では、部位別発生順位は第1位、死亡順位は第2位となっています。
一方でわが国の1993年の統計をみると、部位別死亡順位は第10位でしたが、近年増加傾向にあります。

症状

早期癌においては自覚症状はありません。前立腺癌が尿道や膀胱に浸潤して初めて自覚症状が出現してきます。
尿道・膀胱に癌が浸潤してくると、排尿障害、血尿、膀胱刺激症状が出てきます。
癌の浸潤が尿管に及び、背部(でざいん、腎臓のあたり)に叩打痛が出るようになると腎不全等の可能性も出てきます。
前立腺癌が骨に転移した場合の初期も無症状ですが、次第に骨転移部に疼痛がでてきます。
全身骨転移になると、耐えがたい痛みとともに貧血やそのほかの合併症も出てきます。

診断

前立腺癌の診断は「直腸内指診」、「前立腺特異抗原(PSA)」、「超音波検査」、「磁気共鳴画像診断法(MRI)」などさまざまな方法で診断されます。
中でも「前立腺特異抗原(PSA)」は男性の生殖器官のみ産生されるタンパク質であり、前立腺癌の優れた腫瘍マーカーであるため定期的な血液検査により、自分のPSA値の変動を知っておくことも大切です。
4.0ng/ml以下が正常、4.1~10ng/ml以上は強く癌を疑う範囲となります。
PSAが高値だからといってすぐに前立腺癌とはいえませんが、前立腺に何らかの異常がある可能性がるため、専門医への受診が必要です。

治療

前立腺癌の治療には「内分泌療法」、「放射線療法」、「手術法」、「化学療法」などがあり、病期によって治療法が変わってきます。
前立腺癌の根治療法として、前立腺の全摘手術がありますが、この場合も患者さんの年齢や健康状態によりできない場合もあります。
最終的には医師と相談の上で納得のいく治療法を選択して下さい。

膀胱癌

膀胱癌には男性と女性とで発生率が異なり、男性は女性の3倍の頻度で発生するというデータがあります。
また50歳代以降の発生率が高いのも特徴の1つです。さらに喫煙や化学物質との関連が深く、喫煙者は非喫煙者に比べるとその発生率は4倍になります。科学物質を取り扱う職業の方に好発するというデータもあります。

症状

最も多い症状は血尿です。顕微鏡で確認できる血尿も合わせると約80%の患者さんにみられます。
その他、頻尿や排尿痛、尿意切迫感などもみられます。
頻尿や尿意切迫感などは前立腺肥大症の症状と似ているため60~70歳代の男性は注意が必要です。

診断

膀胱癌の診断には尿検査、レントゲン、内視鏡などがありますが、中でも内視鏡は膀胱癌の診断には欠かせません。内視鏡の結果により、今後どのような過程で癌が進行していくかということも分かる場合もあります。

治療

膀胱癌には2つのタイプがあり、1つは比較的悪性度が低く、根の浅い癌で、「表在性乳頭状癌」です。「表在性」と「浸潤性」では治療法が異なります。
「表在性」では開腹しなくても内視鏡を使った手術で治すことができますが、再発することが多いため3ヶ月毎の定期検査が必要です。
「浸潤性」の場合は上述にもあるように悪性であることが多く、膀胱を摘出しなければならない場合があります。
しかし病状や癌の状態によっては放射線療法や抗がん剤などを使用し膀胱を温存することもあります。
膀胱癌では進行していると命に関わる状態になることもありますので、どちらのタイプの癌でも医師とよく話し合い、納得のいく治療を受けるようにして下さい。

腎臓癌

腎臓癌は50~60歳代の方が多く、男性の方が女性に比べ3倍かかりやすいというデータもありますが、原因がほとんど分かっていないためいまのところ腎臓癌を予防することはできません。したがって、早期発見がとても重要になります。

症状

症状の内血尿が特徴ですが、ときには無症状のこともあります。そのため以前はとても発見しづらい癌の1つでした。しかし近年は人間ドックなどで超音波検査やコンピューター断層映像(CT)をとる機会が増えたことで偶然に発見されることがよくあります。
腰や背中に痛みを伴うことがありますが、このような症状は腫瘍がかなり大きくなってからであるため最近はあまりみられなくなっています。

診断

通常の血液検査などでは発見が難しく、超音波検査やCT画像などの特殊な検査により発見されることが多くあります。

治療

腎臓癌の治療には腎臓全摘出手術が最も確実で一般的でしたが、最近では偶然発見される小さな腎臓癌が増加したため、腎臓部分切除が行われる機会も増えてきました。
しかしどちらの手術の場合も完全には転移を予防できないため長期にわたる経過観察、定期検査などが必要になります。

精巣癌

精巣癌の最大の特徴は若年層に最も多い癌であり、25~34歳までの癌死亡率第1位ということです。
発生原因は様々ですが、停留精巣の方は発生率が2~9倍上昇するというデータもあります。

※停留精巣・・・生まれたときに精巣が本来の場所にないため手術を必要とする場合がある。

症状

やっかいなことに精巣癌には症状がほとんどありません。
そのため発見が遅れることや、ときには転移後の症状で受診される方もいます。
痛みのない精巣の腫れには要注意です。

診断

診断方法はいくつかありますが、触診や超音波検査、腫瘍マーカー、コンピューター断層撮影法(CT)などがります。
触診では精巣そのものに腫れやしこりがあることが確認できます。また精巣癌の腫瘍マーカーとしてはAFPやhCGがあり、血液中にこれらの物質が発見された場合は精巣癌の疑いが強くなります。

治療

精巣癌の進行度や癌細胞の種類によって治療法は異なりますが、精巣癌との診断であれば、精巣を摘出しなければなりません。その後、抗がん剤などを使用し治療をしていくことになります。
初期の精巣癌でしたら生存率はほぼ100%です。精巣にしこりや腫れを感じたら早期に専門医へ受診するようにして下さい。